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「やっぱり外よ!うん」


今どこにいるかって?


ああ・・・街の中を歩いている。

 

さっきまでは電車。

 

そして、俺の鼻の頭にはバンソーコーが痛々しく貼ってあったりする。

 

「ねぇ、聞いているの!?」

 

肩からさげたかばんの中から甲高い声が聞こえる。

 

「ああ・・・聞いているけど返事はできんぞ」

 


「何で?してるじゃん、ばーか」

 


「独り言は不審に思われる」
ぼそっと回りに聞こえない程度に喋る。


「いいじゃん、変態なんだから」
さらっと、エリー。

 

とりあえず無視。

 

「監禁プレイしたじゃん」
誤解を招く一言。
※周りには聞こえてません

 

「誰が監禁プレイじゃ!!」

言った後でハッとなる!


ぬお・・・ハズカシイ。

 


「やーい、ばーか。私を閉じ込めた罰よ」

 


くそ・・・

 

 

遡ること2時間前。


閉じ込められたエリーは脱出を試みて、閉じ込められた1時間後に脱出していた。


脱出した後も、テーブルの上からベッドまで離れた場所を何とか渡る必要がある。


ベッドまでは本棚から上がれるとして、問題はテーブルの上から降りる方法。


こればかりは運に任せて、テーブルの上の本や、閉じ込めていたザルやその他もろもろを何とか投げて山ができるのに賭けた。

 

そんなにうまくいくわけのだが、そんなときほど運はエリーの味方、拓の敵(笑)
テーブルと壁の隙間をうまく使って降りることができた。

 

テーブルの下に落ちたいろんなものが無駄死に。

 

ベッドへは当たり前のように本棚の裏から上り、最後に鼻の頭を引っ掻いて起床。

 

もともと今日は出かける予定がなかったのだが、どうしてもエリーが外へ出たいと(ワガママ全開で)お願いしてきた。

 

まぁ・・・このままじゃトイレの度に起きる必要があるので、ゲージを買う必要もあるということで家を出た。

 

起床直後ネットをしようとパソコンの前に行こうとしたが、散々罵声を浴びせられ、駄々をこねるハムスター1匹に負けたのは言うまでもない。

 

 

・・・で、何故俺はこんなところに?

 

俺はハムスターのゲージを買いに、ペットショップへ行くはずだった。

 


事前の話でもそのはずだった・・・・

 

 

「私の生まれたペットショップに行くのよ!」

 


そのはずだった・・・

 


何故か誰かの声に導かれるままデパートのおもちゃ屋にいた。

 

誰かのなんていうまでもない。

 

エリー・・・お前何がしたい!?

 


あら、タク、もう起きたの?
いつもは寝てばっかりなのに。


こ~ら!おきなさい、タク。

 

タク、だーめ。

 

あはは・・・

 

静流・・・

 

・・・たーく

 

「起きろ~」

 

「ねぇねぇ起きてよ」

 

朝日がまぶしい。
とっても気持ちの良い朝だ。

まるで昨日の嵐が嘘のようだ。

 

そう、朝だ。
今日は土曜の朝だ。

 

今日は土曜の朝で、まだ時計は7時半だ。

 

「タク、トイレ」

 

目の前の人の言葉を喋る「けむくじゃら」をつかんで、ボーっと考える。

 


なんだ、まだ目が覚めてないようだ。
大きな毛玉が喋っている。

 


そう思い、ばふっと布団に横になる。

 

と同時に、

 

ぐがっ!!?

 

声にならない。

 

どこかの誰かが鼻の穴を引っ張ったようだ。

 

誰か?

 

決まっている。

 

エリーだ。

 


「タク、トイレトイレ!!」

 

 

どこから上がったのかわからないがベッドの上でぴょんぴょん跳ねて叫んでいるエリーを見て、
仕方なくトイレットペーパーを用意し始めた。

 

ふぅー。

 

一息ついたエリーをほったらかしでベッドの上でごろんと横になっていると、どこからかゴソゴソという音がする。
そう、それはベッドに隣接する本棚の裏辺りから。

 

それからしばらくして音がしなくなったかと思うと、ポフっという音が聞こえて、何かが足元をうろついている。

 

体をよじ登るエリー。

 

とりあえず無視。

 

眠い・・・。

 

エリーは横になっている俺の耳元までやってきて

 

「ねぇ、静流って誰?」

 

ぶはっ!

 

予想外の言葉にマンガのように吹き出してしまう。そしておもむろに起きて

 

「お前はどっからベッドに上がってくるんだ!?」


「そんなの決まっているじゃない!
登るといったら本棚の裏に決まっているでしょ!
そこにドラマがあるのよ!!」


・・・しらねーよ。


なんだ・・・ハムスターの常識はわからん。


「とにかく、寝させてくれ、眠い。」

 

「暇」


即答!


「・・・聞いていましたか?」

 

「だから、暇なのよ、暇!
あんたこそ聞いていたの!?」

 

「え~っと・・・」

 

「私は暇なの!
とにかく遊びたいの!!」

 

「ヒマヒマヒマ~!!」

 


・・・埒があかん。

 

台所からザルを持ってきて、うるさいエリーにかぶせた。
上には重しになるように雑誌を乗せて出れないように保険。


サラダボウルでも良かったのだが、さすがに窒息死は罰が悪いので、空気の通るものにした。

もちろん、エリーがうるさいのは言うまでもないが、雑音くらいなら耐えられる。
さくっとかぶせてしばらくの眠りについた。

 

「こら~!!だせ~~!!」

 

睡眠中

 

「だせ~!!バカタク!!」

 

睡眠中


「アホ~!!」


睡眠中

 

「変態~~~~~!」

 

睡眠中・・・

 

「ロリコン(ボソッ)」

 

す・・睡眠中・・・

 

「コスプレ好き」

 

す・・・すいみん・・・ちゅう

 

「ナース萌え」

 

す・・・

 

「鼻フェチ」

 


・・・いろいろ突っ込みたかったのだが、返事したら負けだと思い耐えた。
とにかくこいつの語彙力はいったいどうなっているんだろうか。


そして、数時間が過ぎた。

「ご・・・ごめん。」

横で謝るハムスターを横目にひっくり返ったサラダボウルと、

 

水のかかった携帯をどける。

 

まさか、携帯まで被害が及んでいるとは思いもせず。

 


はぁ・・・

 

ため息がこぼれる。

 

「・・・ごめん。」

ハムスターの表情は全くわからんのだが、声のトーンが謝罪の様子を表していた。


いいよ。そろそろ携帯を変えようと思っていたし。


明日携帯を変えに行くとするか・・・って今日か。

 

そんなこんなでもう4時を回っていた。
とりあえずてきぱきと片付けて、カーペットをドライヤーで乾かす。

 


「そろそろ寝るぞ。
ほらぬれてんだろ?これで身体を拭け。」


さっと投げたタオルを器用にキャッチをして、エリーはころころ転がる。

 

俺は片付けた後、ドライヤーで自分の髪を乾かした。

 

コロコロコロ~

 


コロコロコロコロ・・・・

 


しばらく転がっていたエリーがうずくまってふと止まる。


・・・ぐじゅ。

 

ドライヤーの音でよく聞こえない。

 

スイッチを切り、エリーの方を見ると・・・。

 

「ねぇ・・・ぐじゅ・・・私捨てられる・・・?」

 

泣いてる。

 

顔をあげるハムスター
多分人間だったら泣き崩れた顔をしているんだろう。
相変わらず表情が全くわからん。


ただ・・・声は恐怖と後悔の念が混ざっている。

 

そんな気がした。


無理もない。
ペットショップから飼われた先がまさかのエサ。
隙を見て逃げたもののいくアテもない。
さらに外は大雨。


こんな雨の中投げ出されたらいくらなんでも・・・

 


「大丈夫、心配すんな。」

 


一言声をかけ、そっと頭に指を乗せた。

 

「うう・・・うわ~ん」

 

エリーは泣いて、泣いて、泣いた。
強がっていたもの全てを吐き出して・・・。
そして泣き疲れて寝てしまった。


そっとエリーを赤いクッションの上に移し、俺も寝ることにした。


外はどうやら雨はやみ、天気のよい土曜日を示しているようだった。


っていうかもう5時かよ。

2008年9月

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